台湾の元日本兵への償い ②
取材させてもらった30余名の台湾人元日本兵の遺族や傷病兵のうち、印象に残った人を挙げてみる。
まずは、洪坤圳(こう・こんしゅう)さんである。彼は「日本精神」とあだ名されていたが、「日本精神」とは勤勉で正直で責任感が強く、約束を守ることだという。
洪さんは復員から2年後に結婚し4人の子どもに恵まれた。そういう洪さんの生きざまを見て育った子どもたちも真面目で、いまは大家族に囲まれて幸せな老後を送っている。
つらい話が多かったなかで、洪さんの人柄やその後の人生はわたしの救いであった。
台湾にある「日本精神」が気になって、10年後の1995年にもう一度彼を訪問した。眉間のしわは前にもまして深くなっていたが元気で、詳しく話が聞けた。
日本人の先生はみんないい先生で差別もなかった、と言い切る。寝食を共にし、個人よりも「公」を大事にする日本精神が身についたのだという。ここまでがんばってこれたのは、学寮生活で鍛えられたおかげだと。